ARTIST COMPANY響人
第11回公演「お月さまへようこそ」
2018年4月29日(日)16:30~
「お月さまへようこそ」は大盛況のうちに千穐楽を迎えました。
千穐楽(も)拝見しましたので簡単にご報告します。
(このお写真は会員の方からご提供いただきました。)
毎公演開演5分前にステージで誰かが1曲歌って観客の注目を集めた状態で、上演中の注意事項などをにこやかに通達してくれるという日替わりサービスもありました。(残念ながら畠中さんはこのローテーション免除だったらしいのですが。)
私は原作の戯曲集を読んでいないので、とにかく全編全く知らないお話でした。
短編6篇がオムニバス形式で上演されたということは初日のご報告にも書いておりますが、千穐楽も終わりましたので(というかもう1週間以上経ってしまいましたが)、簡単な各篇の概要(あらすじの書きようがない話もあるので)をご紹介かたがた個人的な感想を書きました。
畠中さんががっつり出演された第6話は逆にかなり詳細な描写になっておりますことご了承ください。(書いているうちにそうなっちゃったもので…)
※「お月さまへようこそ」のプログラムに、各短編の題名は載っていませんが、響人さんの初演時のブログに書いてある題名を参照しました。
1話目 「赤いコート」
<出演者> ジョン/海宝直人 メアリー/宮澤エマ
顔見知りだった高校生のジョンとメアリー。 パーティーから抜け出してきたジョンと、パーティーに向かおうとしているメアリーが、月の光が降り注ぐ場所で出会う。
突然メアリーへの想いを告白するジョン。驚いたエマだが、自分の赤いコートに抱いている不思議な思い入れをジョンが感じ取っていることを知り、その感動から一気にジョンを好きになる。 二人の間に「好き」が溢れ出すお話。
二人の初々しい高校生カップルは見ているだけで微笑ましく、顔がにやけてしまいました。(やたらとキスするし!)特に海宝さんの「メアリーが好き過ぎてどうしていいかわからない!」な演技がたまりません。
全話を観てからあらためてこのお話を見ると、ここには幸せの要素が全て詰まっていたんだなあ、としみじみするというかしんみりするというか…(決してしんみりする話ではないのですけど、まあトシのせいですね。) この16歳の幸せな瞬間が永遠に続くことはないとオトナはわかっています。でもだからこそ、なんと尊い奇跡的な出会いと共感がここにあったことか!と。
2話目 「どん底」
<出演者> ポエット/西川大貴 ラブ/吉田沙良
謎の男/畠中洋 郵便屋/中村翼
変質していく世界の中、表現する術を徐々に奪われていく貧しい詩人ポエットとそれを支える恋人ラブ。 詩人は身体を壊しているし、図書館の貸し出しカードは奪われ、詩を書こうにも鉛筆もない。しかし恋人の守護を受け、未来への希望を捨てずに再び詩を書くための第一歩を踏み出そうと決意する。
時代も場所も特定できないSF仕立てで、かつセリフが非常に散文的で意味がわからない(失礼)ため、理解しようとするより感じるままでいいのかな、というタイプのお話でした。
畠中さんは黒いフードをかぶって、詩人が持っている図書館の貸し出しカードを奪いにやって来る謎の男でした。その後、大金と引き換えに詩人に「おまえの魂をよこせ」と迫るも、ラブに押し返され、笑いながら去って行くのですが…あえて役名を付けるなら「希望を奪う男」でしょうか。 吉田沙良さんのイメージがこの世界観にとても似合っていました。
3話目 「星降る夜に出かけよう」
<出演者> 男/海宝直人 女/宮澤エマ
宅配業者(?)/中村翼(ほんの一瞬)
(2話からの場面転換後、他の出演者全員が「男」を取り囲んでがちゃがちゃと騒ぎ立て、すぐ消える。)
見た目全くさえない男と女。どちらも普通の世間で生き辛さを抱えている。 そんなお互いの心の中に通じるものを感じ取り、くだらないしがらみを断ち切り、痛みと向き合うことになっても真剣に生きていくことを決意すると、突然二人は自分たちが大きな月が輝き星煌めく場所に立っていることに気付く。
彼女が気弱なオタクのように見える「男」にそもそもなぜ惹かれたのかはよくわからないのですが(「彼、ドストエフスキーに似ているわ!」という台詞がありますけど、ググってみる限りドストエフスキーは別にイケメンではありません。)彼女と話すことで彼が救われ、彼女も自分の生き方を変えるきっかけを彼から得ていました。 大きな月と星がまさに突然「降ってくる」演出の唐突さが楽しかったです。
4話目 「西部劇」
<出演者> カウボーイ/西川大貴(駅馬車のジョーを殺した男)
少女/吉田沙良 男/海宝直人(ジョーの弟)
ベッツィー/宮澤エマ(酒場を仕事場にしている娼婦)
バーテン(ピート)/畠中洋
自由なカウボーイと、自由に憧れる少女が出会う。 やはりカウボーイに惹かれ誘惑するベッツィー。 自分の兄を殺したのがこのカウボーイだと知り決闘を挑む男。
それぞれの一瞬の出会いで酒場は決闘の場に! ベッツィーは、カウボーイに「決闘が終わったら2階の部屋に来て」と幸運のお守り代わりに自分のガーターベルトをちぎって渡し、2階に消える。
少女は、危ないから店から彼女を連れ出そうとするバーテンの手を振り切って決闘を見守る。
バーテンが3つ数えたら同時に銃を抜くはずが、卑怯にも「2」で拳銃を抜いた男はカウボーイを庇って飛び出してきた少女を撃ってしまう。 直後、カウボーイが男を撃つ。
少女はカウボーイの腕の中で、彼と出会って初めて自分が生きていると感じたと言い残して死んだ。
死んでしまった二人を眺め、カウボーイは2階の部屋で自分を待っているベッツィーの元へは行かず、自由になりたかった少女の魂を連れて(←あくまでも勝手な解釈です)再び西へ旅立つ。
畠中さんは決闘の現場となった酒場のバーテンの役で、髪は後ろで束ねていてすっきりとかっこよかったです。
ベッツィーが男を騙す手口を皮肉ったりはするものの、決闘が始まりそうな様子におろおろしたり、少女を危険から遠ざけようとするけど言うこと聞いてもらえなかったり、男に言われてしぶしぶ決闘のために3数えたりします。
それ以外の登場人物がかなり突拍子もない行動を取る中、そこに居合わせてしまった唯一の普通の人でした。
5話目 「喜びと孤独な衝動」
<出演者> ジム/西川大貴 ウォルター/海宝直人
サリー(声のみ)/吉田沙良
真夜中のセントラルパークの湖に、親友のジムを無理やり連れて来たウォルター。 自分が恋に落ちた人魚に会ってほしいと懇願する。 人魚の名前はサリーで、彼女も自分を愛してくれていると言う。 夜の湖に向かって光るかぼちゃのペンライト(みたいなもの)を振りながらサリーを呼ぶ姿はかなり滑稽。 ジムはそんなウォルターを止めようとする。
昔は何でも同じように気持ちを共有していた親友のジムに、彼女に出会えた奇跡、喜び、愛し合っているのに生きる世界が違う悲しさなどをウォルターが熱く語れば語るほど、ジムとの距離は広がり、ついに彼は帰ってしまう。
取り残され、どうしようもない孤独を感じた瞬間、サリーから呼びかける声が聞こえ、ウォルターの顔が輝く。
湖に向かってサリーを呼ぶウォルターにドン引きするジムですが、普通に考えたらそれが当然です。私もウォルターのような友人はちょっと欲しくないです。それなのに、「自分の気持ちをわかって欲しい」というウォルターの切実さがジムに伝わらないことをもどかしく思ってしまったのはなぜでしょう。 これまた不思議なファンタジーでした。
第5話「お月さまへようこそ」
<出演者> ヴィニー/中村翼 ロニー/西川大貴 スティーブン/海宝直人
バーテン(アーティー)/畠中洋 シャーリー/宮澤エマ
これはフルに畠中さんが出演されていたことと、6話の中で唯一普通の物語としてあらすじも書けるタイプのお話だったので、あらすじと畠中さんフォーカスな補足と個人的感想を織り交ぜたレポートになっています。(正直、わかりにくいと思います…)
5年ぶりに自分が育った町に戻ってきたスティーブン。面倒見のいい昔の友人ヴィニーとさびれたバーで落ち合う。(このバーにいるやる気のなさそうな年寄りくさいバーテンのアーティーが畠中さんです。果物に被せる虫よけネットみたいなキャップを被り、老眼鏡らしい黒フレームのメガネ越しに上目使い、思いっきり口角を下げて、見事な老け顔になってます!一言で言えば「おじいちゃんくさい!」 基本、注文以外のことは一切関係ない感じでずっと新聞を読んでいます。)
ヴィニーは、久しぶりに会いたいだろうと昔の仲間のロニーとシャーリーもここに呼んだと言う。
ヴィニーとロニーは手を繋いで店を出て行く。続いてシャーリーがスティーブンに「元気でね」(みたいなこと)と言って出て行き、最後にスティーブンも出て行く。
この後、畠中さんはバーカウンターの後ろに戻ると変なネットのようなキャップを外し、メガネを外し、若返ります。(というか役を脱いだ感じ?)
そこに全員が再び舞台上に現れ、第一話でも歌われたテーマソングのよう♪始まりへ戻ってゆく♪という月の歌(満ちた月、遠い日を思い出す、16歳のあの日々を みたいなキーワードが入った歌詞でした。…たぶん。 どなたかちゃんと憶えている方がいらっしゃったらこっそり教えてください。)を全員で歌うのですが…構図が面白いのです。
畠中さん以外は下手を向いて斜めに立ち(客席から見ると身体が斜め45度ぐらい)、やや上空にある月を見上げるような感じで歌っていましたが、畠中さんだけはバーカウンター越しに正面を向いたまま歌っているのです。
登場人物のアーティーとしてなのか畠中さんとしてなのか…どちらにしても、同じ歌を歌いながら一人だけ違う景色を見ているんだなあ、ということが伝わってきます。
まだまだ若い彼らと、同じような気持ちで「16歳」の頃の自分に思いを馳せることはできないわけです。 その表情には大人の苦みと渋みが漂っていて、年齢的に完全に畠中カテゴリの私は、畠中さんの表情にじーん、と共感していたのでした。
以上 6篇おしまい。
海宝さんの繊細で豊かな演技、西川さんの味のあるキャラクター、エマちゃんのキラキラした前向きなエネルギー、沙良さんの不思議な透明感、中村さんのとても17歳とは思えない完成度、そして畠中さんのさすがの「間」と舞台をぐっと締める存在感!&そこにいる安心感!
キャストそれぞれの魅力と、戯曲の魅力が約80分の中にギュッと詰まっていました。
素敵な舞台をありがとうございました!
ハタ坊の会用に終演後にお写真を撮影させていただきました!
こちらは2日目を終えた畠中さんです。
そして、千秋楽を終えた畠中さん! お疲れのところ、ご協力ありがとうございました。