ミュージカル「スター誕生」
2015年9月2日(水)~6日(日)
@シアター1010 ミニシアター
遅くなりましたが、「スター誕生」
千穐楽(他)観劇のご報告です!
ミニシアターは小さな会場ではありますが、連日満員の大盛況でした!
<作品について>
日本人がみんな同じTV番組を見て、同じヒットソングを歌えた時代、1970年代の歌謡曲黄金期!
アイドルへの階段を駆け上がる者、ヒットが出ず迷走する者、自分のポリシーを曲げて「売れる曲」で勝負する者、あくまでも自分だけのスタイルで歌い続ける者…色々な歌手の姿と共に、ヒット曲を出して成功したいレコード・プロデューサー、作曲家、作詞家、歌の先生たち、様々な関係者の思惑や裏事情を、大ヒットメーカーだった作曲家 松沼泰世のアシスタント 中井義一こと「ぎっちゃん」が回想する形でお話は展開します。
出演者は全員舞台の奥に椅子を並べて座っていて、「スター誕生」のスカウト陣としてプラカードを挙げるところから始まります。
舞台装置はこの椅子とプラカードだけです。自分の出演シーンになると前に出て演じます。時にはテレビの向こうの視聴者になってスターに歓声を送ったり、アンサンブルとして歌ったり踊ったり!
着替える必要のあるキャスト以外は舞台上に居続けるため、自分の出演シーン以外も気が抜けません。(畠中さんは一度も引っ込まなかったかも)
オムニバスなショー形式で短いシーンを繋ぎながら、ひとつの「時代」を見せてくれました。
各シーン、その中心となる出演者に見せ場があり、笑いがあり、目が離せませんでした!
<登場人物紹介>
「あらすじ」の代わりに登場人物のことを簡単に紹介にします。(キャスト表参照)
岡ピー/岡田:レコード会社プロデューサー
スーツ姿にじゃらじゃらと装飾品をつけた敏腕プロデューサー。「スター誕生」で他社のスカウトが全く興味を示さなかったジャージ姿で演歌を歌うあか抜けない女子高生コンビの意外性に賭けプラカードを挙げる。(このあか抜けない二人組はユニット名「わさび」ミーちゃん、ハーちゃんとしてデビュー。ミニスカートになって健康的なお色気を振りまきながら歌い踊ったところ、ミリオンセラー連発。子供たちがこぞって彼女たちのダンスを真似をする一大ブームに!)
もう一人、予選から審査員たちの注目を集め、グランプリを取った小川百合子も獲得し、ヒットメーカーの作曲家松沼と作詞家秋早苗コンビに新曲を書かせ、今年の賞レースに食い込もうと狙う。
「わさび」が解散を決めたとき、彼女たちが選んだそれぞれの道を応援する『山にのぼろう』で美声とキレのいいダンスを披露!
~後日談~ミーちゃんと結婚し、彼女の実家のわさび農家を継いだらしい。
ぎっちゃん/中井義一:松沼泰世のアシスタント
この物語の語り部。小川百合子に一目惚れ。 彼女を想って書き上げた曲『君へ』は、松沼の名前で百合子のデビュー曲となる。それ以外にも松沼のゴーストライターとして何曲もヒットさせているが、本人はあくまでもアシスタントという立場に満足していた。しかし百合子の危機には身体を張って彼女を守る。
~後日談~作曲家として独立。引退した百合子と結婚。
小川百合子/新人女性歌手
スター誕生でグランプリを獲得し、清純派歌手として大人気となる。デビュー曲『君へ』に込められた愛を松沼の気持ちだと信じ、プレイボーイの毒牙に…スキャンダルの渦中、睡眠薬で自殺を図るが、ぎっちゃんに助けられ、『君へ』が彼の作品だったことを知る。新人賞レースの本命だったが、引退。
松沼先生/松沼泰世:作曲家
当代随一の人気作曲家。百合子、ハーちゃん、後藤順子等、自分が曲を提供した新人歌手たちにすぐ手を出すプレイボーイだが、どこか憎めない。実は作詞家の秋紗奈江ともW不倫関係。百合子との関係が表沙汰となり、妻の親戚(極道)に落とし前をつけさせられる。
~後日談~すべての指を失い、行方不明に…。
花山千寿/歌の先生
わさびのレコーディングにつきっきりで歌唱指導もするし、売れない歌手の愛原ゆうやの相談にも親身になって乗ってくれる、素敵な先生。最大の見せ場は美空ひばりのように燕尾服姿で歌った『ニッポン歌謡曲ブギ』
秋 紗奈江/作詞家
ロック歌手の妻でもある、天才肌の人気作詞家。彼女と松村は、ヒット曲を生み出すゴールデンコンビ。見せ場は、「3番まで歌わないと内容がわからない」ように作詞した『手をつないで』を自らしっとりと歌うシーン。
愛原ゆうや/新人男性歌手
歌唱力はあるが華がない。自分の個性に悩み都度芸名やコンセプトを変え『真面目な男の子』」(あいざき進也風)→『星から来た男の子』(城みちる風)→『銀座4丁目の男の子』(クールファイブ風)と曲を出すが全く売れなかった。ありのままの自分とは何か?を問い続け、後年はオネエキャラとしてテレビに定着したとか…。
松 みどり/演歌歌手
この数年ヒット曲に恵まれず、復活をかけて松沼に曲を依頼する。ところが渡された曲は『どんぶらこ』と『パンダのマーチ』。演歌歌手のプライドはズタズタ。『パンダのマーチ』の予想外のヒットにかえって心が荒むが、マネージャーでもある夫に支えられ歌い続け、ついに歌謡大賞!
井川ヤスシ/演歌歌手の夫でマネージャー
猛烈な営業活動の末、ヒット間違い無しのゴールデンコンビから歌の提供を受け、張り切っている。しかし妻の涙には弱く、彼女が『パンダのマーチ』をそこまで嫌がるなら番組出演を断り2人で出直したっていい、仕事より君の方が大切だ、と予想外の名曲『大切なのは』を熱唱。
ミーちゃん/鈴木美智子:新人女性デュオ
わさびが爆発的に売れ、寝る暇も遊ぶ暇もない毎日でも全てはスターになれた者の義務だと精進する。コンビのハーちゃんと方向性の違いから解散を決めたが、世界に通用する歌手を育てたいという岡ピーの夢を叶える!と宣言。
~後日談~ソロでアメリカ進出するが夢破れ撤退。プロデューサーと結婚したらしい。
ハーちゃん/田辺春子:新人女性デュオ
松沼と不倫関係にあり、次第に仕事より恋愛を優先するようになる。忙しすぎる毎日に、「このままではすり減るばかりで何も残らない。好きだった音楽をもう一度楽しめるように自分を見つめ直したい」と引退を決める。
~後日談~松沼が妻と離婚する気がないことを知り、出家したらしい。
とくらはなみ/新人フォークシンガー
アングラバーで暗〜いフォークソングを歌い続ける歌手。「私の歌は、お経より暗いと言われています」とのことで、メジャーデビューにも興味なく、自らの情念を歌うことに意義を見出す。百合子が松沼の不倫相手と知ってお酒を飲んで荒れるぎっちゃんとのデュエット『恨み節』は絶品。
後藤順子/朝比奈ミキ(芸名):新人女性歌手
「スター誕生」からデビューの道を掴んだ新人歌手。松沼にいい曲を書いてもらうためには枕営業も辞さない、ある意味根性のあるタイプ。百合子が脱落したことで、その年の新人賞を受賞。
オリちゃん/テレビっ子
いつもテレビを見ている視聴者代表。歌謡界の行方を占う『売れるか売れないか』では、わさびが一大ブームになると明言。また、売れない歌手愛原ゆうやのファンとして、彼がどんな時も応援し続ける健気な一面も。
<Musical Numbers>
01)スター誕生(ぎっちゃん・小川百合子・カンパニー)
02)どんぶらこ(松沼・ぎっちゃん・松みどり・井川ヤスシ)
03)真面目な男の子(愛原ゆうや)
04)新宿の女(ミーちゃん・ハーちゃん)
05)わさび(秋紗奈江・松沼・ミーちゃん・ハーちゃん)
06)恨み節(とくらはなみ)
07)すべてを歌に(ぎっちゃん・小川百合子)
08)売れるか売れないか(オリちゃん・カンパニー)
09)カレーライス(ミーちゃん・ハーちゃん・ぎっちゃん・岡ピー・松沼・花山・秋)
10)君へ(ぎっちゃん)
11)生まれたわけ(小川百合子)
12)星から来た男の子(愛原ゆうや改め 星みちる)
13)パンダのマーチ(松みどり・カンパニー)
14)ニッポン歌謡曲ブギ(花山千寿・カンパニー)
15)しりとり歌(小川百合子)
16)恨み節 (ぎっちゃん・とくらはなみ)
17)銀座4丁目の男の子(矢吹ひろし・東京ムーディーズ=岡ピー・松沼・ぎっちゃん・井川)
18)ファンレター(オリちゃん)
19)手を繋いで(秋紗奈江・ぎっちゃん・松沼・岡ピー・矢吹ひろし)
20)大切なのは(井川ヤスシ)
21)山にのぼろう(岡ピー・ミーちゃん・ハーちゃん・カンパニー)
22)君へ(ぎっちゃん・小川百合子・カンパニー)
23)すべてを歌に(松沼先生・カンパニー)
24)スター誕生(小川百合子・カンパニー)
話の舞台が実際にあった時代で、役のモデルを想起させるようなエピソードが盛り込まれていたからか、月組、星組のダブルキャストは、大きな括りで言えば役作りを揃えていたと思います。
もちろん持ち味はそれぞれ違うのですが、「まったく違うタイプ」のダブルキャストより安定した面白さがありました。 そのスターたちの輝きを裏から仕掛けていたプロデューサー岡ピーがシングルキャストの意味もそこにあるのかな、と。
アイドル曲、演歌、フォークソング、ムード歌謡、服部良一風ブギ…どれも今回のオリジナル曲なのに、当時のテイストがものすごく上手盛り込まれているため、「あったあった、こんな感じの曲!」と懐かしさに圧倒されました。
自分たちを取り巻く経済や社会は右肩上がりに成長していると信じていた当時のイケイケどんどんな空気まで感じてしまうのです。その時代にどんぴしゃでハマってしまう人間にとってはたまりません。
とにかく楽しい作品で、畠中さんも終始弾けまくっていました。(畠中さんもまさにどんぴしゃ世代…)
岡ピーとしてセンターで歌い踊った『山にのぼろう』はもちろん最大の見せ場だったと思いますが、もう一つすごいシーンがありました!
愛原ゆうや君が「矢吹ひろしと東京ムーディーズ」としてムード歌謡に挑戦したとき、バックコーラスの畠中さんが最高でした!
「でゅわわわ~」と声を張り上げるその怖いぐらい真面目な顔と無駄な美声に爆笑です。(おまけ情報のレコードジャケット写真その1を是非ご覧ください)
小さな劇場で最小限の装置で最大限に楽しい舞台でした。
畠中さんは2組のゲネプロを含めて10連荘だったとのこと、本当にお疲れ様でした!
千穐楽終演後、お花の前で変顔ポーズをとって下さった畠中さんです!