2015年6月28日(日)12:00開演
「ウレシパモシリ」は大盛況のうちに
千穐楽を迎えました。
本当に客席内びっしり!の満員御礼。
初日、千穐楽を含め何度か阿佐ヶ谷に通いましたので、ネタバレも含めた観劇のご報告をさせていただきます。
この舞台は、「唄1」「唄2」という歌い手がAKIRAさんの楽曲を通してお芝居のシーンに寄り添うように、また引っ張るように進みます。
♪劇中で使われている楽曲♪
光の子どもたち
Sunday
世界はたりてる
大丈夫マイフレンド
Bleeding love
祝福の歌
The answer
愛を知らない子どもたち
叡智
Happy end of the world
Fragile
ありがとう
ミタクオヤシン
ウレシパモシリ
使われているAKIRAさんの楽曲は全て既存の曲ですが、この舞台のための書下ろしであるかのようにハマっています。
歌詞はAKIRAさんのサイトで確認できます。何曲かは聴くこともできます。
あらすじは私の感想を入れずに淡々と簡潔に…と思っていたはずが、どうしても畠中さんの古市のシーンが詳細になってしまい後半がどんどん長くなりました。邪魔なので後半は隠しページにしてあります。
<あらすじ>
-横浜-
気のいい兄の哲治(塩見淳史)と、ちょっと気の強い妹の聖(ひおき彩乃/平川めぐみ)の家にやってきたフランス人、ジェルマン・ボナパルト(鈴木良一)。
ナポレオン皇帝の血を引くという彼は、見た目は熊男で中身はピュアすぎてトンチンカン。痩せた野良犬にも自分の食事を与えて可愛がる。
片言の日本語と優しい笑顔から滲み出る善良さに、関わった人たちはつい世話を焼いてしまう。
日本に来た目的は質問してもはぐらかすばかりで謎のまま。
繁華街でチンピラに殴られればただ無抵抗にやられ泣くだけだが、哲治たちの母(田中梨花)を心配させないよう「転んだことにしよう」と提案したり、もっと多くの日本人に会いたいからと、居心地の良い兄妹の家から出て行く芯の強さがある。
-渋谷/山谷-
哲治の家を出た後、ついてきた野良犬のポール(高田亜矢子/田部谷夕海)と共に渋谷を歩いていたとき、男に殴られていた娼婦みどり(隼海せい/狩俣咲子)を助ける。 みどりは空腹のジェルマンとポールを連れ帰り、食べ物を与える。娼婦仲間のあい(田中光/笠原光希)とやよい(塚越眞夏/田中里佳)も、なぜかジェルマンに心を許す。みどりは寝場所の提供者として知り合いの占い師(田中梨花)を紹介する。
占い師はジェルマンの人相を見て「大きな志を秘めている」と言い、生きていく上で大切なことは、何があっても人間を信じ続けることだと説く。
<<全体を通して感じたこと>>
ジェルマンとは何者で、何の目的で日本に来たのか、そしてどこに消えたのか。
それは結局最後まではっきりと明かされることのないまま、このお芝居は終わります。
そこがいいな、と思いました。
観客の想像にゆだねられることで、それぞれが自分なりの印象を大切にできます。
この作品は「作品のファンクラブ」があるという珍しいお芝居ですし、AKIRAさんの音楽のファン、という方も多いはずです。 そのせいか、客席の雰囲気がなんか他の舞台とはちょっと違いました。
まず客層が年配の男性が多かったと思います。
そしてお芝居が始まるとかなり最初のうちから泣き出す方が…。お芝居だけを見ていたら、正直泣くところではないのに、です。
あらすじでは割愛してしまいましたが、前半は楽しいシーンも沢山あります。
オープニングは全員が子供になって大騒ぎしているし(畠中さん、髭のままですけど)、聖の会社の同僚井上(石松啓太)の存在感は強烈だし、フロントマン(秋山秀樹)の変なスペイン語には毎回場内爆笑でした。
それでも、お芝居の中で使われるAKIRAさんの作品はスピリチュアルなメッセージ性の強い歌詞なので、人によってはどストライクに胸に響くのでしょう。
ジェルマンがちょっと困ったような茫洋とした表情で座っている時に歌がかぶさると、(書下ろしではないから)そのシーンや彼の心情を説明しているわけではなくても、全てが彼に当てはまる気がするし、歌詞から色んなことを想像させられるんです。 そこに何を重ねてしまうかは本当に観客それぞれだからこそ、泣いている人もいれば微笑んでいる人もいる、という不思議な客席になるのでしょう。
さらに唄1唄2の組み合わせで、お芝居の雰囲気もかなり変わります。
キムさんRACCOさんペアのパワフルかつ情感あふれる歌、岡村さん平川さんペアのピュアで寄り添うような癒しの歌、どちらもステキでした!
<<畠中さんの古市について感じたこと>>
思わず目を背けたくなるほど激しい暴力シーンもありましたが、「殺し屋 古市」という男がリアルに存在することがこのお芝居の鍵だと思うので、ダークパワー全開の畠中さんの迫力は本当に素晴らしかったです。(本気で殴っているようにしか見えません!)
激しい立ち回りでは舞台の上で吹っ飛ばされたり倒れたりするシーンも多く、いつものことながら何の防御も取らないリアルな倒れっぷりには目を奪われました。(怪我をしないか心配ですけど、それ以上に感心してしまうというか…)
利用するために拉致したジェルマンから示された信頼や友情は、古市にとって晴天の霹靂で「うざっ」って感じだったでしょうし、復讐の邪魔をされたことにも爆発的な怒りを表しましたが、本来は詩を愛する心優しい青年だったはずです。
ジェルマンは、ポールを撫でる優しい表情こそ古市の本質と見抜いたから彼を信じ、「見捨てない」決心をして、ついには彼の魂をこちら側に引っ張り戻してくれました。
ジェルマンを疎ましがりながらも心が揺らぎ始めてしまった表情、そんな自分の揺らぎにイラつくような表情、怒りにぎらぎらしていてる中にも畠中さんの古市の表情からは色んな感情が見えて、目が離せませんでした。
そして最後に留置所で淡々とシラサギの話をしているときの穏やかさ…シラサギの羽ばたきが劇場に響いたとき、観客は古市の瞳に映るシラサギを見ることができます。
「さよなら」とかすかに口元が微笑んだ瞬間に暗転するので、下手側に立っている哲治を見ている場合ではなかったです。(すみませんね、哲治さん)
畠中さんのそのラストの笑顔を見たときに、私はジェルマンが消えた理由がわかった気がしました。
東北まで追いかけてきたジェルマンに、「どこまで俺に付き纏うつもりだ?」と古市が聞くと、「アナタ、今病気。アナタの病気が良くナリマシタ時、ワタシはサヨナラします」と言ったんです。 この「病気」は「肺病」だけを指すのではなく、治療もせずに憎しみで凝り固まり自らが死に向かっている彼の心のことでもあると思います。
ジェルマンによって呼び醒まされた善良な部分と、それを否定する自分との壮絶な戦いは、小森に銃を突き付けていたときの古市の全身の震えとなり(この時の畠中さんの表情もすごかった…)、結局気を失って倒れました。
小森をどうしても撃てなくなってしまった古市は、ようやく自分を縛っていた憎しみから解放された…これが「病気が良くナリマシタ時」だから、ジェルマンは「サヨナラ」した…古市もちゃんと「さよなら」が言えた…畠中さんのファンだからこその古市目線なこじつけなのかも知れませんが、そう解釈する余地を残してくれているこの脚本はやっぱりステキです。
そして畠中さんの古市、本当に素晴らしかったです!!
あれだけ衰弱してボロボロになっていた古市は、あのまま警察病院に収容されてあっさり死んでしまったかも知れませんが、それでもジェルマンの大きな愛を受けて最後に彼の心は温かいものに満たされたと信じてます。
ありがとう、ジェルマンさん!(by 古市の天国の母)
<<千穐楽のこと>>
毎回開演10分前から行われるイベント「歌唱指導」の進行役、ピアノの守屋さん、本当にトークがお上手で、幼稚園の先生並みに有象無象な客席をまとめていました。
その守屋さんが「千穐楽でもいつも通り丁寧にやりなさいと、出演者の皆さんが演出家に言われてました」と暴露してましたが、本当にいい舞台でした!
カーテンコールの後に全員から一言ずつご挨拶があったのですが、それぞれの作品への思い入れがヒシヒシと伝わってきました。あんなに涙をこらえながらの挨拶が続くってちょっと珍しいです。
畠中さんも、あの大きな目を潤ませながら「この作品に出会えたこと、古市という役に巡り合えたこと、素晴らしい仲間と一緒にやってこられたことに感謝しています」とおっしゃっていました。
その後、センターからちょっと端にずれて目立たないような位置に行ってしまうのがまた畠中さんらしかったです。
でも私は見てました。他のメンバーのご挨拶を聞きながら、何度も涙が込み上げそうになって、口をぐーーっとへの字にして堪えていたんです。
ああ、本当に畠中さんの古市に会えてよかった!と改めて感謝してしまいました。
カンパニーの皆さん、素敵な舞台をありがとうございました!
こちらに掲載したあらすじ、感想はあくまでも当サイト発起人の
個人的な視点から書かれておりますのでその点はご了承ください。
全部まとめてになってしまいましたが、公演中に撮影させていただいた畠中さんのお写真一挙公開えす!
終演後に客席内に来てくださるのですが、ライトの加減でなかなか彫の深い畠中さんをきれいに撮影できなかった私をお許しください…
★6月24日(水)終演後★
★6月26日(金)終演後★
そして千穐楽!素晴らしい快晴に恵まれ、外で撮影させていただくことができました! 畠中さん、ありがとうございました。